Cornelius、開演。 - フジロックにいかないつもりじゃなかった

 

フジロックにいかないつもりじゃなかった」は、これまで一度もフジロックに行ったことがなく、2017年のフジロックにも行くことが叶わなかった、小沢健二Cornelius、そしてフリッパーズギターファンの僕が、「フジロックってこんな感じだろう」「『オザケンCorneliusが同じ日に出演するフジロック』は、こうなったらいうことないなあ」という想像をもとに書いた、平行世界のようなフィクションです。

 

 

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Corneliusのライヴが行われるGREEN STAGEについたのは、18時を少し過ぎた頃だった。開演予定時間の18時50分までは、まだ時間がある。この裏ではThe Lemon Twigsが演奏していることもあり、人はまだちらほら、といった具合だった。何かのインタビューで、Cornelius本人も観に行きたいと語っていたとおり、ファンもなかなか見られない、彼らの生の演奏を覗きに行っているのだろう。

 

雨は降り続いていたが、この頃になるとぼくはすっかり雨合羽を信用しきっていて、十分に水分を含んだ草原の上に座り込み、ぼんやりステージを眺めていた。最前列こそすでに熱烈なファンが待機しているが、Corneliusやバンドメンバーの顔がはっきりと見える位置はまだ空いている。しかし、Corneliusのライヴが終わってから10分ではじまるオザケンのステージのことを考えると、人波にのまれてしまうわけにはいかない。iPodYOUTUBEのなかで聴いてきたフリッパーズギターのふたりが同じ日にフジロックに出演するという魔法的な一日は、あくまでふたりのライヴをともに観ることができてはじめて、魔法的たりうるのだ。

 

18時半をすぎると、前方は徐々に埋まっていき、ステージが見えなくなってきていた。開演10分前になると僕は立ち上がり、すこしステージへ近づくと、モニタービジョンが見やすい場所へと移動した。SEはどこの国のものかもわからない音楽と、アンビエントなBGMが交互に流れている。開演直前になると、前方はさすがにかなり混雑していて、僕の周りも人が囲むようになった。さっき座っていた場所を振り返ると、そのあたりにまで人が集まっている。

 

僕の頭の中は、これからはじまるCorneliusのライヴへのわくわくとともに、今日どこかのタイミングで、小沢健二小山田圭吾のふたりが一緒にステージに立つんじゃないかという期待がどうしてもはなれなかった。事前の噂では「あのふたりがあえて同じステージに立つとは思えない」という意見が大半を占めていたし、昨日の夜には曽我部恵一が「(オザケンコーネリアスが)フリッパーズギターの曲をやりそうにはないから」とGROOVE TUBEを演奏したことも知っていた。それでもオザケンが19年ぶりにシングルを出して、フジロックに出演し、Corneliusも新譜をひっさげて同じ日に演奏するという、一年前には考えられなかったことが次々と現実になっていることを考えると、どれほどありそうにないことでも起こってしまうのではないかという不思議な期待を持ってしまうのだった。

 

開演が迫る。時計を見ると18時52分。もういつはじまってもおかしくない。そう思っていると、大きな音量のBGMとともにモニタービジョンに映像が流れ出し、次に出演する彼の名前がコールされた。

 

一瞬の沈黙。そしてゆっくりフェードインするように、入場SEが流れはじめた。その瞬間、僕はそれがなんの曲なのかに気がつくと同時に、驚きとも興奮ともつかない、その両方の入り混じったような声を漏らしていた。

 

ステージの薄い照明が小雨に反射する中、そこで流れていたのは、The Beach Boysの「God Only Knows」だった。